金融経済暴落に向けて)日銀の国債保有、時価で初の5割超え 日銀公表

日銀の国債保有時価で初の5割超え 日銀公表

金融政策

20221219 9:10 (20221219 22:37更新) [有料会員限定]

 

 

日銀が19日公表した資金循環統計によると、日銀による国債保有割合が20229月末に時価ベースで初めて5割を超え、過去最大となった。日銀は金融緩和のために長期金利をゼロ%程度に抑えこんでいるが、金利上昇圧力の高まりで国債購入が膨らんだ。中央銀行財政赤字を事実上穴埋めしている状況で、財政規律の緩みなどの副作用も強まっている。

 

9月末時点の国庫短期証券を除く時価ベースの国債発行残高は10656139億円、日銀の保有額は5356187億円だった。日銀による保有割合は50.3%6月末の49.6%を超えて最大となった。

 

10年前は約10%だったので上昇ぶりは際立つ。国庫短期証券を含めると、日銀の保有割合は44.9%。次いで保険・年金が19.6%、海外が14.1%、銀行などの預金取り扱い機関が13.2%だった。

 

日銀は長期金利の上限を0.25%程度に抑える方針に沿って国債を無制限に買い入れている。世界的なインフレを背景とした米欧の金利引き上げをきっかけに、日本でも今年春以降、金利上昇圧力が高まった。日銀もいずれ政策修正に追い込まれるとの思惑から海外投資家を中心に国債売りが加速した。

 

日銀は臨時の国債買いオペなどあらゆる手を尽くして金利上昇の抑制に奔走してきた。その結果、日銀の国債保有割合は足元でさらに上昇している。QUICKによると、額面ベースでの長期国債保有割合は129日時点で51.4%と過去最高を更新。1012月も金利上昇圧力にさらされ、日銀による年間の国債購入額は6年ぶりに100兆円を超えた。

 

中銀による資産保有は日本が突出している。SMBC日興証券によれば、総資産の名目GDP国内総生産)比は米国34%、欧州67%に対し、日本は126%だ。世界的にインフレが加速するなか、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行ECB)は市場から大量の国債を購入する量的緩和政策をすでに打ち切っている。保有資産を減らしていく量的引き締め(QT)と呼ばれる局面に入っており日銀だけが国債を買い続けている。

 

日本の物価上昇率3%を超えている。ただ、日銀は安定的に物価目標(2%)を実現できる状況には達していないとして、賃上げの動きが広がるまでは現状の大規模緩和を続けるという姿勢を崩していない。

 

日銀の国債購入の最大の問題は、いくら政府が借金を増やしても日銀が国債を引き受けてくれるという認識が広がり、財政規律が緩むことだ。2013年の異次元緩和スタート後、日銀の国債保有が増えるのと軌を一にするように、国債の発行残高も1000兆円規模に膨らんだ。

 

財政の日銀依存が強まれば、日銀は大規模緩和をやめにくくなるという問題もある。日銀が緩和を縮小すると、金利の上昇を通じて財政にも大きな影響を与えてしまうためだ。政府から独立しているはずの金融政策が、国債管理政策に実質的に組み込まれているのが現状といえる。

 

(秋田咲)         

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB190SC0Z11C22A2000000/