日銀倒産)日銀の「国債爆買い」で辛うじて維持してきた借金漬け財政がもはや限界に

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日銀の「国債爆買い」で辛うじて維持してきた借金漬け財政がもはや限界に

3/29(水) 7:03配信

 

 

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現代ビジネス

3月9日に経済学者の植田和男氏が総裁に就任することが国会で承認され、注目の的となっている日本銀行

 

植田和男氏、日銀総裁候補指名までの「状況」が暗示する、日本経済の「不穏な未来」

 

10年にわたり、黒田総裁の下で異次元の金融緩和を進めてきた日銀は、今や日本にとって「リスクの塊」となりつつあると、日本総合研究所の調査部で主席研究員を務める河村小百合さんは指摘します。

 

異次元緩和を「死守」する日銀の態度の裏には何があるのでしょうか。

 

現代新書の新刊『日本銀行 我が国に迫る危機』から、日銀の無理な国債買い入れが引き起こしかねない危機について解説したパートをお届けします。

 

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超低金利状態はいくらでも長引かせられる?

黒田日銀は、これほど世界的な経済・金融情勢が変化しているにもかかわらず、自らの任期中における超金融緩和政策の転換を頑なに拒み続けてきました。2022年12月に10年国債金利の許容変動幅を±0.50%に拡大させた際にも、黒田総裁は「これは利上げではない」と言い張っています。なぜここまで頑ななのか。

 

黒田総裁らが表向きは決して口にすることはありませんが、前回挙げた日銀の財務問題以外にもう一つの「本当の理由」があり、それは、我が国の財政運営であることは間違いありません。

 

超低金利状態が長期化してしまっている我が国では、それが当然と安易に信じてしまって疑わないような風潮が蔓延しきっています。なかには、超低金利状態は、第2次安倍政権時代のように、強い政治のリーダーシップさえあれば、中央銀行が簡単に作り出せるもので、いくらでも長引かせることができ、今後ももっと続けるべきだ、という意見もあります。

 

ただし、「リフレ派」と呼ばれるそうした方々の見解に、完全に欠落している点があります。現実問題として、日銀に今後、かかってくるコストがどれほど大きいか、国全体としてそれをどう乗り切るのか、という問題です。超低金利状態は、日銀が国債を買い入れ続けさえすれば、何のコストも負担もなく作り出せるものでは決してないのです。

 

この先、そう遠くない将来に、超低金利状態を作り出すうえでの相当なコストにもう日銀自身が耐えられない、ということが突然、明らかになったとき、我が国の財政運営は、これまで長らく続いてきた「無風」状態から一転、現状の歳入・歳出構造のままでは一気に行き詰まる可能性があるのです。

 

世間からは、「そういう事態に至る引き金を日銀が引いた」と受け止められるかもしれません。自分たちの任期中には、そういうことには決してなってほしくない。そういう理由もあるからこそ、黒田日銀は超金融緩和政策の転換を頑なに拒んできたのでしょう。

赤字・債務超過転落で国債買い入れは続行不能

日銀の今後の財務運営がどうなるか、日銀が赤字に転落するか、果ては債務超過となるのかは、ひとえに、短期の政策金利をこのままマイナス金利やゼロ金利のままで、どこまで引っ張れるかどうかにかかっています。

 

我が国でもすでに消費者物価指数(全国、総合)の前年比が4%にまで上昇し、日銀の「2023年度には物価の伸びは1%台に下がる」という見通しとは裏腹に、企業がこれまでにはなかった強気の価格転嫁傾向をみせていることなどもあって、今後も相応の物価上昇が続くのではないか、という声も多く聞かれるようになっています。

 

円安圧力も依然、根強いなかで、超低金利が物価の押し上げ圧力を下支えしていることも否めないでしょう。そして日銀が短期の政策金利の引き上げに踏み切らざるを得なくなったとき、現在、他の欧米主要国の中央銀行がとっているような3%とか4%というような水準ではなく、もっと手前のわずか1%の水準に短期の政策金利を引き上げるだけで、日銀は今のままでは一気に赤字に転落するのです。

 

しかも、その状態が2~3年程度継続するだけで、日銀はほどなく、「単年度の赤字」レベルを超え、バランス・シート上の債務超過状態に転落することになります。

 

抑えられなくなる国債金利の水準

では、そうした局面では、国債につく長期金利は果たしてどうなるでしょうか。

 

現在の10年国債金利の0.50%という水準は、多様な市場参加者の見方、相場観の純粋な集大成として形成されている金利水準では決してありません。日銀が力ずくでの国債買い入れによって、そうした動きを無理やり抑え込んでいるのが実態です。

 

しかも、2022年12月に、日銀が10年国債金利の許容変動幅を±0.50%に拡大してからの方がむしろ、市場参加者による金利の押し上げ圧力は一段と強くなっており、日銀はかつてないほどの金額での国債の買い入れを余儀なくされています。

 

普通の中央銀行であれば、こうしたオペレーションはまずやりません。いずれ必ず来たる正常化局面では、中央銀行の赤字幅は「「逆ざや」の幅」×「資産規模」で決まります。

 

「逆ざや」の幅が同じでも、当該中央銀行の資産規模が大きければ大きいほど赤字幅は大きくなってしまいます。中央銀行が特定の国債金利の水準を防衛しようと、超低金利国債をさらに買い入れて中央銀行自らのバランス・シートに抱え込めば、いずれ来たる正常化局面での赤字幅をさらに拡大させることになってしまうため、政府から真の意味で独立した立場にあり、「中長期的な物価安定」という目標の達成のために金融政策を運営する普通の中央銀行であれば、こうしたオペレーションは、まず、やりません。

 

中央銀行自身の財務悪化を通じて、先行き、本来、必要なタイミングで金利を引き上げられなくなり、金融政策の機動的な運営能力が損なわれたり、最終的には重い国民負担につながってしまったりしかねません。そうなることは最初からわかっているため、まず、やらないのです。

「超低金利状態」はもはや不可能に

ところが黒田日銀はそうしたオペレーションを、あたかも平然とやり続けてきました。しかしながら、この先、日銀が短期の政策金利を引き上げざるを得なくなり、赤字や債務超過への転落が現実のものとなった局面ではどうでしょうか。

 

10年国債金利を、例えば0.50%に抑え続けるために、多額の国債を買い入れ続けることは、日銀自身がこの先、利上げ局面に入ったときに、赤字幅や債務超過幅をさらに悪化させることにつながります。

 

一国の中央銀行の財務の大幅な悪化やその長期化は、当該国の財政運営とも相まって、国家の信用、通貨の信認を大きく揺るがしかねない事態です。その評価は、当事者である当局者がどう言い張ろうと、最終的には国際金融市場、世界の市場参加者が決めるものです。

 

外国為替市場における円相場の動向が鍵を握ることになりますが、実際には、日銀が赤字に転落する前の段階で、すでにこれだけ円安が進んでいます。今後、日銀の赤字や債務超過への転落が現実のものとなれば、それは小幅の赤字などでは到底済まず、また短期間の赤字でも到底済まないことが一気に白日の下にさらされることになるのです。

 

通貨の信認はさらに揺らいで円安が一層進み、日銀は間違いなく、国債をそれ以上、買い入れることはできなくなるでしょう。それどころか、自らの赤字幅や債務超過幅を少しでも縮小させなければならなくなり、すでに買い入れた国債をできるだけ手放して、資産縮小をしなければならなくなるはずです。

 

「日銀が赤字になって困るのなら、国債を発行して日銀に買い入れさせ、それを元手に日銀の損失を補填すればよい」などという声を耳にしたこともあります。繰り返しますが、日銀の赤字幅は、ごく大ざっぱに考えれば、「「逆ざや」の幅」×「日銀当座預金の残高(≒国債買い入れ残高)」で決まります。

 

日銀の国債買い入れ額がさらに増大すれば、日銀が直面する「逆ざや」の幅が仮に同じでも、そこから発生する赤字幅はさらに膨らむことになります。そうなれば、まさに「火に油を注ぐ」形で円安をさらに加速させることになり、そうした考え方がいかにナンセンスであるかは自明でしょう。

 

仮に私たち国民が増税に応じてそれを元手に政府が日銀の損失の補填をするとしても、日銀が国債を買い入れ続ければ日銀の赤字は無尽蔵に増え続けます。それを国民が増税で負担し続けることなど不可能でしょう。要するに、日銀が力ずくで「超低金利状態」を作り出すことは、もはや不可能になるのです。