ゼロゼロ融資企業の倒産続出 利上げも逆風 終わる「過保護」、企業淘汰で新陳代謝へ
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行し、8日で1年が経過した。コロナ禍で実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)を受けながら、過剰債務を抱えて倒産する中小企業が続出している。返済負担を軽減する政府の支援策は6月末で終わる。日本銀行が利上げを進めれば、借入金の利払い負担が増え、経営はより厳しくなる。「過保護」はいつまでも続かず、企業の淘汰(とうた)が進むことになる。 【グラフでみる】ゼロゼロ融資を利用した企業の倒産件数 ■過保護でゾンビ延命 ゼロゼロ融資は令和2年3月に開始。無利子(3年間)で最大3億円を貸し出し、借り手に代わり国が利子負担する。返済が滞ると公的機関の信用保証協会が肩代わりする。昨年10月末時点で民間と政府系金融機関を合わせ約259万件、約45兆円の融資が行われたが、返済は今年4月に最後のピークを迎えた。 融資で急場は凌げても、人手不足や原材料高などに耐えられる経営改革がなければ過剰債務に陥りかねない。東京商工リサーチによると、ゼロゼロ融資を利用した企業の倒産は令和5年度に622件と過去最多を記録した。 ゼロゼロ融資は実質的に破綻している「ゾンビ企業」を増やした一因とされる。帝国データバンクの推計によると、ゾンビ企業はコロナ禍前の平成30年度の14万8千社から、令和4年度には25万1千社に増え、東日本大震災直後の平成23年度に次ぐ規模になった。 ■進む企業の淘汰 追い打ちをかけるのが日銀の政策変更だ。「金利のある世界」が戻ってくることで、企業の借入金の利払い負担は増す。一方、稼げない企業が倒産して成長産業へ労働力が移動すれば、経済の新陳代謝が期待できる。 明治安田総合研究所の小玉祐一フェローチーフエコノミストは「企業が生き残るには、利上げに備え財務基盤を強化する必要がある。生き残れない企業まで支援する過保護をやめ、企業が選別されるのは自然な流れだ」と述べた。(宇野貴文)