食料危機)コメの国際相場が急上昇中

コメの国際相場が急上昇中

 

(参考記事) インドがコメ輸出停止を発表した後から米国で「コメのパニック買い」が発生。地域により価格は一気に3倍以上に
地球の記録 2023年7月26日


米の国際相場上昇 インドによる一部輸出禁止で

日本農業新聞 2023/08/04

世界最大の米輸出国インドが、7月下旬にインディカ(長粒)種の白米輸出を禁止したことを受け、米の国際相場が値上がりしている。小麦や大豆などの穀類に比べ落ち着いていた世界の米相場に混乱が及んできた。

世界の米相場の指標となるのは、タイのバンコクから輸出される精米価格。7月26日の取引では基準となる白米(5%砕米)が、1トン当たり572ドルを付け、インドの禁輸前の前回(同12日)の取引価格に比べ7%上がった。2020年の春以来の最高値だ。

インドに次ぐ米輸出国のタイ、ベトナムでも、深刻な干ばつで米の減産が懸念されている。

地元紙によると、タイやベトナムの輸出業者は農家からの買い入れ価格を引き上げて米の手当てを急ぐが、先行きの供給不安から急増する注文に追い付いていないという。

インドは世界最大の米輸出国。近年は年間2000万トンを超え、国際市場に出回る米の4割を占める。国内で1億3000万トン(精米)を生産する米大国だが、インド政府は「米の国内価格は上昇傾向にある。小売価格は1年間で11・5%、過去1カ月で3%上昇した」(消費者・食品公共配給省の声明)ことを懸念。7月20日付でインディカ種白米の輸出を即日禁じた。

昨年9月にこの種類の米に20%の輸出関税を導入したものの、輸出量が拡大したため、今回は輸出禁止に規制を強化した。

インドの米輸出の多くは、高級な香り米(バスマティ)と、アフリカ向けの安価なパーボイル米。今回対象の白米は全輸出量の半分以下のため「禁輸の影響は限定的」という見方もある。

国連食糧農業機関(FAO)が毎月発表する世界の米相場によると、6月の米の国際指標価格は126で1年前に比べ14%高い。米の価格が高騰すると、アジアやアフリカ中南米など米に依存する国々で政情不安などが起きやすい。国際機関は輸出国が安易に輸出規制に走ることを警戒している。

nofia.net

 

日経新聞より

www.nikkei.com

コメ、インド禁輸で高騰

11年ぶり水準、食料インフレ再燃も 国内食品に波及の恐れ

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コメや小麦など主食の供給懸念が強まっている。コメの最大輸出国であるインドが自国内の供給優先のため、一部の高級品種を除く白米の輸出を禁止。国際指標のタイ産の輸出価格はインドの禁輸後に急騰し、約11年ぶりの高値を付けた。小麦も7月下旬に一時5カ月ぶり高値となった。世界的な食料インフレが再燃するリスクが高まりつつある。

タイ産米のバンコク輸出価格(FOB=本船渡し、砕米率5%)は7月27日時点で1トン607.5ドルと、インドが禁輸を発表した20日に比べて1週間で62.5ドル(11.5%)急騰。2012年5月以来約11年ぶりの高値を更新した。

きっかけとなったのが、世界首位のコメ輸出国であるインドの動きだ。インド消費者問題・食料・公共配給省は7月20日、輸出の増加により自国のコメ価格が上昇しているとして「価格引き下げと自国消費分の供給確保」のため、高級品種であるバスマティ米以外の白米の輸出を禁止すると発表した。

禁輸が世界のコメ需給に与える影響は大きい。米農務省(USDA)によるとインドのコメ輸出量は22~23年度に2250万トンと世界全体の4割を占めた。インドに次ぐ2位のタイの輸出量は同850万トンにとどまる。

今年7年ぶりに発生した異常気象の「エルニーニョ」現象も、コメ不足のリスクを高めている。太平洋赤道域で海面水温が高くなるエルニーニョ現象は、コメ生産の中心である東南アジア地域に降雨不足による干ばつをもたらす恐れがあるためだ。

供給減少により世界のコメ在庫は23~24年度末時点で1億7042万トンと17~18年度以来6年ぶりの低水準まで落ち込むと予測される。今後の天候次第ではさらなる下方修正のリスクもある。在庫減は需給逼迫を市場に意識させ、国際価格の一段の高騰を招く恐れもありそうだ。

足元ではコメと並ぶ主食である小麦にも供給懸念が再燃している。ロシアが7月中旬、ウクライナ穀物黒海輸送を巡る輸出合意の履行を停止。さらにその後もロシア軍がウクライナ最大の穀物輸出拠点である南部オデッサへの攻撃を強めたためだ。

小麦の国際指標である米シカゴ商品取引所先物は中心限月の9月物が7月下旬に一時1ブッシェル7.7ドル台と一時2月下旬以来5カ月ぶりとなる高値を付けた。

コメの国際価格は昨年、ウクライナ侵攻を受けて小麦などの穀物価格が急騰した際にも相対的に安定して推移。世界で深刻化した食料危機の一定の緩和材料となった。足元で同時に進行するコメと小麦の供給懸念は、今後それぞれの不足が深刻化した際に安価な代替先を見つけにくくする恐れがある。

07~08年にはコメや小麦など主要な農作物が同時高となり、農業(agriculture)と物価上昇(inflation)を組み合わせた「アグフレーション(agflation)」とも呼ばれた農産物主導の物価高騰が起こった。

アグフレーションが再来すれば、最も深刻な影響が及ぶのが経済的に貧しく、かつ食料を輸入に頼る国も多いアフリカなどの新興国だ。国際価格が高騰すれば外貨不足から十分な食料の輸入が難しくなり、国内のインフレに拍車をかけ飢餓人口の増大を招く。

国連などが7月に発行した年次報告書「世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」によると、アフリカで飢餓に陥っている人は22年時点で人口の19.7%にあたる約2億8100万人と、10年時点と比べて77%増加した。一段の状況悪化となれば、同地域での社会的・政治的な不安定化にもつながる恐れがある。

日本の食卓にも今後影響が及ぶ可能性がある。日本は主食としてのコメの自給率はほぼ100%なものの、味噌や米菓など加工品の原材料は輸入米にも頼る。日本政府は年間約77万トン輸入するミニマムアクセス(MA)米を商社などから入札で買い入れる。農林水産省によると22年度はその半数を占める約40万トンがタイからの輸入だった。

タイ産のコメは米菓や味噌だけでなく、生産工程での管理のしやすさなどの理由で泡盛などの主原料にも使われる。原材料の仕入れ価格の上昇は、国内の食料品の価格にも波及する恐れがある。

コモディティーエディター 浜美佐、沢隼)