オンライン契約の本人確認書類には運転免許証をはじめとする本人確認書類を利用するケースが多いです。しかし今後は「マイナンバーカードだけ」になると言います。なぜどのような動きがあるのでしょうか。

運転免許証の画像を悪用する事例が後を絶たず

 現在、オンライン上で契約をする際は運転免許証をはじめとする本人確認書類を利用するケースが多いですが、今後は原則としてマイナンバーカードでの本人確認に一本化される予定です。
 
 では、なぜこの一本化を推進するのでしょうか。

 最近はオンラインで銀行・証券口座の開設や、クレジットカードの申込みなどをする人が増えています。

 その際の本人確認としては運転免許証の写真と自分の顔写真を撮影して送信する方法が一般的です。

 しかし、政府は2024年6月におこなわれた犯罪対策閣僚会議の中で、オンラインによるサービス契約時の本人確認について次の方針を明らかにしました。

「非対面の本人確認手法は、マイナンバーカードの公的個人認証に原則として一本化し、運転免許証等を送信する方法や、顔写真のない本人確認書類等は廃止する」

 つまり、今後オンライン契約においては運転免許証や健康保険証、住民票の写しといった本人確認書類が利用できず、基本的にマイナンバーカードで本人確認をおこなうこととなります。

 では、一体なぜマイナンバーカードでの本人確認に限定するのでしょうか。

 その大きな理由は、クレジットカードや携帯電話などの不正契約といった犯罪を防止するためです。

 オンラインでの契約時に本人確認書類の写真と契約者の顔写真を撮影して提出する方法は「eKYC(electronic Know Your Customer、電子本人確認)」と呼ばれますが、実は本人確認書類の写真を偽造して不正に契約する事案が後を絶ちません。
 
 たとえば2024年9月には、高速道路で言いがかりをつけてトラックドライバーの運転免許証を撮影し、その画像をもとに他人名義のクレジットカードを作成して買い物をした男女ら3人が詐欺と窃盗の疑いで警視庁に逮捕されています。

 この容疑者らは高級スポーツカーで狙いを定めたトラックを追尾し、トラックがサービスエリアで止まった際に「飛び石でクルマに傷がついた」と因縁をつけてドライバーに運転免許証を提示させ、スマートフォンで撮影していました。

 そして撮影した運転免許証の顔写真や住所部分などを加工して他人名義のクレジットカードを作成した後、商品の購入を繰り返していたとみられます。

 なお容疑者らは9人分の運転免許証の写真を利用して合計34枚のクレジットカードを作成、被害額は4000万円にも上ります。

 近年は画像編集ソフトの性能向上により、eKYCによる本人確認では同事案のように画像を偽造されるおそれがあるほか、クレジットカード会社や銀行など事業者側も偽造を見抜くことが難しくなっています。

 その一方で、マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を利用する公的個人認証サービス(JPKI)は他人によるなりすましやデータの改ざんを防止でき、その高い安全性から本人確認の方法として推奨されています。

 具体的にはオンライン契約をする際、NFC機能の付いたスマートフォンマイナンバーカードをかざすか、パソコンにICカードリーダーを接続してカードのICチップを読み取り、本人確認をおこないます。

 政府が示す方針のとおり、今後オンラインでの手続きはマイナンバーカードのICチップ読み取りによる認証が主流になっていくといえるでしょう。

 そのほか対面での本人確認においても、偽造されたマイナンバーカードで勝手にスマートフォンを契約され、その後キャッシュレス決済を利用される被害が発生しています。

 この事案では、携帯ショップの店員が本人になりすまして来店した人物とマイナンバーカードの顔写真を確認したのみで、ICチップを使った本人確認をしていませんでした。

 このような事例は複数発生しており、政府は対面での本人確認に関してもマイナンバーカードなどのICチップ情報の読み取りを義務付けるとしています。

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 将来的にはオンラインでの本人確認がマイナンバーカードの公的個人認証サービスに一本化されることが予想されます。

 仮にマイナンバーカードによる本人確認が浸透した場合、今度はカードそのものをだまし取る詐欺が増える可能性もあり、個人が犯罪への危機感を持っておくことが重要といえるでしょう。