食料安保で資源・食糧問題研究所の柴田代表「長期に輸入できない事態想定を」
食料安全保障を巡る状況が厳しさを増す中、資源・食糧問題研究所の柴田明夫代表は、「平時」の取り組みの重要性を指摘した。要旨は次の通り。 これまで不測の事態というのは輸出の中断など一時的なものという見方で、短い期間で対処できるという想定だった。だが今や世界は変化している。気候変動や紛争などいくつもの要因が重なって、長期的に食料を輸入できない事態を想定しなければならなくなっている。 食料・農業・農村基本法が制定された平成11年当時、世界的に農産物が余剰過剰で、世界経済のグローバル化に伴い、日本は価格の安い食料の輸入を拡大させてきた。食料安保は、専ら輸入に頼ってきた。その結果、日本の食料自給率は先進国の中で最低水準にとどまることになった。だが、ロシアのウクライナ侵攻で食料安保のリスクが浮き彫りになった今、コストをかけて国内生産を増やして自給率を上げつつ、不測の事態への対応を整備する必要がある。 一方、政府が生産者に対して強制力を持って増産を指示することができる法整備には慎重な声も出ている。生産者の立場を踏まえて、慎重に議論を進めるべきだ。 気候変動やエネルギーの高騰など、不測の事態が近年、恒常化しているともいえる。不測時の対応も大事だが、平時の食料安保はより重要になってくる。そもそも、農業の担い手不足が指摘される中で食料をどう増産するのか。農家の高齢化で耕作放棄地が増えているが、農地を誰に持たせ、どのように有効活用するのか。根本的な課題に対処する道筋を明確に示すべきだ。(聞き手 浅上あゆみ)