金融経済暴落)日本銀行のイールドカーブコントロールが、ヘッジファンドに潰された。ヘッジファンドはまだまだ売りポジションを作るようなので、この様にして、金利が上昇してゆき、いずれ一気に金利上昇が起きると思われる

日銀の金融緩和修正、苦渋のサプライズ 市場は波乱含み

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永浜利広さん他1名の投稿永浜利広上野泰也

 

金融政策決定会合後に記者会見する黒田日銀総裁20日、日銀本店)=代表撮影
【この記事のポイント】
・急激な円安・物価高に批判、修正迫られる
・住宅ローンは上昇も、資産運用にはプラス
・市場との対話に課題、信頼取り戻す努力欠かせず

日銀20日金融政策決定会合長期金利の上限を0.25%程度から0.5%程度に引き上げた。2013年から始めた大規模緩和の事実上の縮小で、住宅ローン金利や企業向け貸付金利の引き上げによって景気には逆風となりかねない。市場参加者が次の「サプライズ」を期待して円買いや債券売りを加速するようになれば、金融市場は波乱含みとなる。

円安・物価高批判受け

今回の政策修正は日銀内でも極秘裏に検討が進んだ。黒田東彦総裁ら日銀幹部がつい最近まで、上限引き上げは「事実上の利上げ」として否定的に語っていたこともあり、市場は不意を突かれることになった。

黒田総裁は修正の理由について、買い取り対象の10年債利回りが下がりすぎ、期限の短い債券の利回りよりも低くなるような市場のゆがみを挙げた。だが、決定の背景には、利上げを急ぐ米国との金利差拡大で歴史的な水準まで円安が進んでいたという事実がある。

円安は輸入価格の上昇を通じて物価高を加速させ、批判の矛先は大規模緩和を続ける日銀に向けられていた。特に1ドル=151円台まで円安が進んだ10月下旬、首相官邸で大規模緩和の副作用への懸念が強まった。

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題に円安に伴う物価上昇が重なり内閣支持率が低下。首相周辺からは「物価高に財政出動で対処する手法は永続的ではない」と、日銀への不満とも取れる声が漏れていた。

黒田氏は11月10日、首相官邸を訪れて岸田文雄首相と会談した。首相周辺によると、黒田氏は具体的な方法には触れずに金融政策を従来よりも機動的にする必要があると説明した。黒田氏は12月20日、修正方針の発表にあわせて首相に電話で詳細を伝えた。

景気減速に懸念も

事実上の金利引き上げで家計や企業経営への影響も避けられない。まず2023年1月以降、住宅ローンの固定金利が上昇し、住宅投資の重荷となる可能性がある。

住宅ローンの固定金利は米国の利上げのあおりですでに上昇傾向にあった。大手行の12月適用分の10年固定金利は、1年前の12月と比べると0.1~0.4%ほど高い。各社は月末にかけて翌月の固定金利を決める。指標とする長期金利が上昇すれば「1月の金利も上げざるを得ないだろう」(大手行担当者)との見方が多い。

一方、短期の政策金利はマイナス0.1%に据え置かれたため、変動金利への影響は避けられそうだ。

金利上昇は企業にとって借り入れや社債の利払いの増加につながる。東ソーの桑田守社長は「『金利が低いから多少の借金も許容する』と考えていた企業にとっては厳しい環境になるだろう」と指摘する。

企業活動が抑えられれば働く人の所得減を通じ、消費にも水を差しかねない。仮に賃上げ機運がしぼんだ場合、景気や物価への影響は大きい。三菱UFJリサーチ&コンサルティング小林真一郎氏は「特に中小企業は財務基盤が弱く、小さな金利上昇でも債務負担が増し、設備投資の手控えにつながる可能性がある」と分析する。

プラス面もある。金融緩和で進んでいた円安にブレーキがかかれば、企業は輸入コストを抑えられる。富士通の時田隆仁社長兼最高経営責任者(CEO)は「サーバーなどの部材価格が落ち着くことを期待している」と話す。食料品などの値上がりが止まれば、家計はほかの商品やサービスにお金を回すことができるようになる。

貸出金利の上昇による利ざやの改善や資産運用の環境が好転するとの見方から、20日の東京株式市場ではメガバンクや生命保険会社の株価が軒並み急上昇した。急速な市場の変動を警戒する向きもある。

金融界は金利水準を一定幅に抑え込む日銀の金融政策がもたらす副作用への配慮を求めてきた経緯がある。日本生命保険の筒井義信会長は20日の決定を受けて「金融緩和の大きな枠のなかではあるが、出口を模索する動きと前向きに受け止めている」と指摘した。

揺らぐ市場との対話

金融政策の先行き指針(フォワドガイダンス)を示すことで市場の混乱を避け、政策効果を高めることが世界の金融政策の潮流だ。日銀の今回のサプライズはこうした流れに背を向けたものといえる。

米連邦準備理事会(FRB)がインフレの勢いの強さから6月、市場の事前予想を上回る0.75%の利上げに踏み切った例もある。ただ、今回の日銀の場合、直前に想定外の経済指標が公表されたわけでもないのに市場参加者のはしごを外したという点で、極めて異例といえる。

今回のサプライズを受け、日銀が投機筋からの攻勢にさらされるのではないかとの見方がある。日銀の緩和縮小に賭けて債券を空売りしていた米欧などのヘッジファンドは、長期金利の急上昇(債券価格は下落)で大きな利益を手に入れたとみられる。

日銀が弱みを見せたことによって「(ヘッジファンドなどが債券売りで)次の引き上げを催促する可能性がある」(関係者)。黒田総裁はさらなる変動幅の拡大には否定的だが、市場との対話を軽んじた総裁の言葉を参加者が信用するかどうかは不透明だ。

米欧の利上げで世界の金融市場が不安定になるなか、金利の乱高下が目立つようになっている。英国では財政への懸念をきっかけに長期金利の上昇に歯止めが掛からなくなった。状況は異なるものの、日本でも長期金利の上昇が加速する可能性は否定できない。

市場では、日銀の今回の決定がサプライズだったことだけではなく、緩和修正後の黒田氏の説明が説得力を欠いたことを批判する声がある。市場の信頼を取り戻すための丁寧な対話の努力が求められることになる。

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